話題のドラクエ映画、『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』を公開当日に観てきたので、そのレポートをお届けします。
はじめに断っておきますが、この記事はドラクエおよびドラクエVのファンに向けて書いています。
ドラクエのことを全く知らない人は「ちょっと何言ってるかわからない」状態になると思うのでご注意ください。
もくじ
ドラゴンクエスト ユア・ストーリーの感想 ドラクエ愛に溢れたファンのための映画

さて、公開前日にまず予告編を観て泣いてしまいました。(早い)
そして鑑賞当日、劇場には若者だけでなく、子連れのお父さんや40〜50代くらいの方が多かったのが印象的でした。
劇場に足を運んだ人々の気持ちを想像するとなぜか泣けてきて、
そこにいる人たち全員を思わず「仲間になりたそうな目」で見てしまいました。
この映画は良くも悪くもドラクエファン(またはRPGファン)に向けて作られた作品です。
また、ドラクエVをプレイしたかどうかで評価が20倍くらい変わります。
ドラクエVをプレイしたことがないと、映画を観ても「???」となるシーンも多いです。
が、しかし!
ドラクエVが大好き!という人にとっては最高の映画体験になること間違いなしです。
この映画は製作者とプレイヤーのドラクエへの愛、そしてそれをプレイして育った私たち自身への愛に溢れていました。
ドラクエVをプレイしてから観るもよし、映画を観てから改めてドラクエVをプレイするのもいいでしょう。
鑑賞前に抱くドラクエ映画化への不安

私は大のドラクエファンですが、この映画ドラクエが発表された時点では、
おそらく多くのドラクエファンが不安に感じたことを、同じように感じたと思います。
この映画の原作になっている「ドラゴンクエストV 天空の花嫁」といえば、シリーズの中でも特に人気の高い作品。
この記事を書いている私にとっては、ドラクエVは人生で初めて出会ったゲームであり、いちばん好きなドラクエでもあります。
ドラクエVの絶大な人気は1992年にスーパーファミコンで発売後、時を越えてPS2やニンテンドーDSでリメイクされ、毎回ヒットしていることからも疑う余地はありません。
しかし、多くの人に愛されている作品だからこそ、夢を壊してほしくない、映画化は難しいというのがファンの思うところでしょう。
しかし、ドラクエといえばファンを裏切らないことでも有名な作品です。
スマホゲーム全盛の時代、2017年に発売された『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』が300万本以上も売れたことは、ドラクエファンの期待とその期待に真摯に向き合い面白いゲームを作り続けてきた制作チームの信頼の証だと思います。
ドラクエXIでは、ファミコン時代に発売された初代ドラゴンクエストからのファンも、
思わずニヤリとするような仕掛けでファンを喜ばせました。
ドラゴンクエストは昔から今でも、ずっとそういう作品なのだなと改めて考えてみると、
「映画が面白くないわけない!」と思うようになっていました。
原作ドラクエVと映画ユア・ストーリーの違い

そもそもドラクエVの長いストーリーを1本の映画にまとめるのは難しいのではないか?とファンなら誰もが思うはず。
しかしそれはご心配なく。
気持ちいいくらいバッサリと切っています。特に序盤の飛ばしっぷりはすごいです。
そしてそれがこの作品を楽しむためのボーダーラインになっています。
ドラクエVをプレイしたことがあれば「あ、ここはあのシーンね!」と自然に脳内補完できるので、自然とストーリーに入っていけますが、未プレイの人にとっては話が飛び飛びに感じるでしょう。
ストーリーに若干の変更あり
ストーリーをまとめるために変更が行われている部分が結構あります。
登場しないキャラクターもいて、ちょっぴり寂しい気持ちになりましたが、全体としてはうまくまとめたな、という感じです。
見どころ 原作ファンのための様々な仕掛けに注目

見どころたっぷりのユア・ストーリーですが、その中でも特によかった点を紹介します。
キャラクターデザインが素晴らしい

鳥山明デザインじゃないことに対しては賛否両論のキャラクターデザイン。
しかし、映画としてはこれでよかったと思います。
映画のための新しいデザインになっても、原作への愛が感じることができました。
すべてのキャラクターが本当に魅力的。

ビアンカがめちゃくちゃかわいい。
大事なことなのでもう一度言いますが、ビアンカがめちゃくちゃかわいいです。
声や表情や仕草やセリフすべて!
特にビアンカは声(有村架純)も素晴らしい演技だと思いました。

フローラもめちゃくちゃかわいい。

ゲマは相変わらず気持ちいいくらいのクズ。CGになったことで、ビジュアルからしてクズっぷりに磨きがかかった上に、動きやボイスも相まってまさにクズ・オブ・クズ。

キャラクターの表情が本当に素晴らしく、キャラクターが泣くとつられて泣けてきます。
もちろんモンスターたちもゲームに劣らない魅力があります。

すぎやまこういちの音楽の数々
ドラゴンクエストといえば、すぎやまこういちさんの音楽を抜きにしては語れません。
映画の中でも様々なドラクエの名曲が流れます。
開始数分、映画の序盤で街のBGM「街は生きている」が流れた瞬間、涙腺がいとも簡単にやられました。
ドラクエV以外のナンバリングの楽曲も登場するので、ぜひ映画では音楽にも注目してみてください。
セーブデータが消えた時の「あの効果音」も登場します。笑
観た人だけがわかる【ユア・ストーリー】の本当の意味

ユア・ストーリーを直訳すると「あなたの物語」ということになります。
つまり映画を観る私たち自身の物語であると。
この映画の広告のキャッチコピーは「君を、生きろ」です。
果たしてこれはどういうことなのか?
ドラゴンクエストシリーズのゲームは、主人公が一切喋らないということが特徴です。
これはゲームの主人公は登場キャラクターではなく、プレイヤーであるあなた自身ですよ、ということになっているわけですね。
ストーリーの中でキャラクターに感情移入しやすくするための工夫とも言われています。
しかし、映画となれば主人公が無言というわけにもいきません。
予告編を見る限り普通に話していますし、「ゲマ~!貴様~~!!」なんて怒りをぶちまけて言ってしまっています。笑
その辺りはゲームとは違った工夫で、「これは私の物語だ」と思わせてくれる工夫があるのか?
観る前はそんなことを考えていたのですが、実際に映画を観て理解しました。
この展開はまったく予想しておらず、見事にやられました。
タイトルロゴの謎 反転した「R」の文字

YOUR STORYのSTORYの「R」に注目すると、ここだけ文字が反転していることがわかります。
私は初めてこのロゴを見た時から、これが気になっていました。
反転した文字が表しているのは、この映画が私たち自身の人生のストーリーを映し出す鏡のような存在であるということです。
映画を観た人だけがこの意味を理解できるかもしれません。
ドラゴンクエスト ユア・ストーリーの名ゼリフ・名言

映画に登場する、印象的なセリフを紹介。
大人になれ!
このセリフはあるキャラクターが、主人公リュカと鑑賞者である私たちに向けて放つセリフです。これが何を意味するのかは映画で確かめてほしいと思います。
このセリフに対するリュカの返しも非常にアツく、涙なしには見れませんでした。
Continue your adventure
厳密にはこれは誰かのセリフではありませんが、印象に残った言葉です。
私なりに訳せば、「さぁ、君の冒険を続けるんだ」というところでしょうか。
ユア・ストーリーに登場するセリフは、キャラクターの声でもあり、私たち自身の声、そして私たちに向けて語られるように感じます。それがこの映画を魅力的にしている重要なポイントでもあります。
ドラクエの記憶とプレイヤーの人生までをも繋げた衝撃の仕掛け

この記事ではネタバレになるので詳しくは書けませんが、ドラクエを原作にしているこの映画にしかできないクライマックスの仕掛けと展開には、驚きとともに涙が溢れました。
オープニングの意味や、劇中でのリュカの不自然なセリフなど、映画に散りばめられた伏線がクライマックスに回収されるのですが、
「ドラクエVをプレイしたことがある」という私たちの記憶、そしてその記憶を持って生きている私たちの人生を映画に取り入れる見事な展開になっています。
映画と私たちの人生や記憶がリンクする時「ユア・ストーリー」の意味を理解できるでしょう。
この映画を観ればきっと思うはずです。
「あぁ、これは私の物語だ」と。
ドラゴンクエストVをプレイしたすべての人に観てほしい

ドラゴンクエストVといえば、親子三代に渡る物語が大きな特徴です。
劇場で印象的だったのは、おそらくまだドラクエVをプレイしたこともないであろう小さな子供たちを連れた、ひとりのお父さんの姿でした。
彼もまた自分の子供たちに、自分が愛した世界を見せたいと思ったのでしょう。
映画が終わった後に目にしたのは、その子供たちが楽しそうに感想を話している姿。
それはまさにドラクエVの物語と同じように、世代を越えて大切なものが受け継がれた瞬間でした。
RPG史上おそらく初めて結婚相手を選ぶことができたり、親子との関係が描かれたドラクエVは、私たちの人生とリンクする部分が多いからこそ、こんなにも愛される作品になったのだと思います。
映画でも表現されていますが、ゲームはもはや架空の世界ではなく、もうひとつの現実です。
多くの人々に愛されるドラクエVの物語、そしてあなた自身の物語をぜひその目で確かめてください。
作品情報
原作・監修 | 堀井雄二 |
総監督・脚本 | 山崎貴 |
監督 | 八木竜一、花房真 |
音楽 | すぎやまこういち |
キャスト |
リュカ / 佐藤健
ビアンカ / 有村架純 フローラ / 波瑠 ヘンリー / 坂口健太郎 パパス / 山田孝之 サンチョ / ケンドーコバヤシ プサン / 安田顕 ルドマン / 松尾スズキ スラりん / 山寺宏一 マーサ / 加賀千香子 ブオーン / 古田新太 ゲマ / 吉田鋼太郎 ミルドラース / 井浦新 |
上映時間 | 103分 |